世界的な社会情勢などが原因で、ガソリンの値段は上昇を続ける一方です。 このため、バイクを電動バイクに買い換えようと考えているライダーも増えてきたのではないかと思います。
バイクには熱効率というものがあり、熱効率が高ければ高いほどガソリンを有効に使えているということになります。 逆に言えば、ガソリンをそのまま100%効率よく動力に変換しているバイクというのはあり得ないわけです。 ですから、1,000円分のガソリンを給油したとしても、半分以上は動力に直結していないことになります。
熱効率を高めるためには、燃焼室壁面からの熱損失を抑えるために、燃焼室表面積を極力小さくする、あるいは吸入空気量を増やせるように、可能な限り大きい吸・排気弁を配置するといった方法が考えられます。 また、ノッキングの発生を防ぐために燃焼室壁面の冷却性を確保するのも熱効率を上げるための対策です。
例えばCB400の燃料消費率は国土交通省届出値の場合で31.0(60km/h)、WMTCモード値では21.2となっています。 最も熱効率がいいと言われているHONDAシビックのe:HEV(ハイブリッド)に搭載されている2.0L 4気筒ガソリン直噴エンジンの最大熱効率は41%ですから、これでもガソリンの半分以上は動力に変換されていないことがわかります。
HONDAは熱効率の改善に非常に力を入れていて、熱エネルギーを無駄なく使える「アトキンソンサイクル」なども開発されています。 アトキンソンサイクルは、理論的には熱効率のいいガソリンエンジンとして昔から知られていたのですが、技術的に実現が難しく、なかなか思ったような成果が得られませんでした。
多くのメーカーではミラーサイクルと呼ばれる別のシステムを「アトキンソンサイクル」と呼んでいたという経緯があります。 ところが、HONDAでは2011年にアトキンソンサイクルを実現し、市販化しています。 「EXlink(エクスリンク)という名前の複リンク式高膨張比エンジンがそれで、12.2:1の圧縮比に対して膨張比を17.6:1まで拡大させることによって、少ない燃料から最大限のエネルギーを得ることに成功したのです。
動力に変換されていないガソリンは熱として放出されたり、排気として放出されていたりします。 また、エンジン内部のフリクションでもガソリンが消費されてしまいますし、未燃焼ガスの存在も見逃せません。 エネルギーのロスを極力抑える工夫はどのバイクメーカーでも行なっていますが、その中でもHONDAの技術力はやはり優れているといえるでしょう。 冷却EGRや筒内燃焼の最適化(ガス流動)などによって、エネルギーのロスを軽減することが可能です。